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K-magazine 第4号
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日本-在日-韓国オンナのユースフォーラム前編
「教科書問題・あたしの見方」

司 会−琴玲夏(通訳・翻訳家)
討論者−原田徳子(団体職員、写真家志望)
     寺田さほり(IMADRボランティアスタッフ)
     安彩子(建築CADオペレーター)
     張美京(経実連青年会会長)
     白允姫(ロッテワールド免税店セールスマネージャー)

玲夏―今日は「日本―在日―韓国ユースフォーラム」の場に集う女性たちに集まって頂きました。お互いが女性としてどんなことを感じているのか話し合ってみたいと思います。

 今回のユースフォーラムの大きなテーマの一つは「歴史認識問題」です。これは女性、男性というようなテーマではないですが、まずは女たちは今の教科書問題について個々人としてどんなことを感じているかお聞きします。

美京―え〜、いきなりそんな難しいことから入るの〜。結婚してるかどうかを先に知りたいわ。

徳子―してません。

彩子―私は去年の一〇月に。

美京―まぁ。能力があるのね。

玲夏―能力と何の関係があるのよ!(笑)

美京―プロポーズに応える能力よ。(笑)

玲夏―あなたは結婚してるの?

美京―ええ。(笑)

玲夏―ハイ、ハイ、本題に入るわよ。教科書問題を韓国がどう捉えているか、みんな興味があると思うんだけど、どんな風に伝えられてる?マスコミや、社会的な雰囲気は?

美京―今は小学生ですら署名運動を行ってるのね。街頭にまで立って、「つくる会」の教科書採択に反対して、署名をやってる。私の見た感じ、世の中の九〇%くらいはそこに同調していると思うわ。

玲夏―どうして九〇%以上もの人が同調するわけ?

美京―実際にどういう風に記述されているのか、実は私も良く知らない。ただ、事実どおりに記述されていないことが伝えられていて、子どもに嘘を教えるとはどういうことだ、けしからんという雰囲気がそうしていると思う。

彩子―怖いですよね、今の動き。日本の報道を見てると、なぜ教科書の問題が韓国や中国などで反対されているのかという内容を問うのではなく、ただの外交問題みたいに扱われている。中には「韓国や中国は大人気ない」という論調も。

徳子―ユースフォーラムで「つくる会」の教科書採択に反対する共同署名をやって、和歌山の教育委に持っていったじゃないですか。そのことが翌日の産経新聞一面 に、「在日韓国青年連合が抗議」と掲載された。ユースフォーラムとして行ってるのに韓青連と書くってことは、「外圧」と言いたいのかなぁと思った。戦後日本社会が、例えば天皇の戦争責任問題などを何も解決してこなかったことが、今になって噴出しているように思う。これからどうするか、韓国や中国が怒るから、在日がいるからではなく、日本人が主体的に考えなきゃいけないし、そこにどうアプローチしていったらいいのか考えてます。

玲夏―韓国では小学生ですら反対するのに、日本でテレビの報道をただ見ている人は、どうして韓国人がそんなに怒っているのか実際分からないと思う。

允姫―報道されてないの?

玲夏―報道はされてるんだけど、日本自身の問題というのではなく、ある一つの教科書に対して中国と韓国が過剰に怒って外交問題になっているといったトーン。この状況じゃあまりにも温度差がありすぎて、お互いに何がどうなのか理解できないんじゃないかと思う。

 韓国が怒るのは当然なんだけど、日韓関係のもつれがあると韓国で日の丸を燃やしたり、わら人形を燃やしたりする映像をやたら目にする。そういう人たちはどんなことを考えてやっているんだろうと、私も不思議に思った時期があった。ナショナリズムというと聞こえが悪いけど、そんな風に感じない?

美京―そういう光景をしょっちゅう見るから、慣れちゃってコワイと思ったことがないのね。なんて言うか、社会的な文化って感じ?

玲夏―文化なんだとしたら、面白すぎる。(笑)でも、私たちからは、ちょっと理解しがたい。

美京―韓国ではデモはそこかしこであるし、日の丸を燃やす光景を見ても、「あ、やってるわ」くらいの認識で素通 りする。でも外信ではそういうことを大きく取り上げるみたいね。日本だけじゃなく、米国の友だちにも奇妙に映ってるみたい。「戦争でもする気か?!」なんて電話がかかってきたり(笑)。

玲夏―そういうの、どう思います?

徳子―韓国の人は怒ってはんねんなと思って見てるけど。

彩子―パフォーマンスとしてやっているというのは理解しているんですけど、やっぱりちょっとナショナリスティックな感じがしますね、そういう映像を見ると。日本の歴史歪曲教育によって、韓国という「国」が汚された、という感じで日の丸に火をつけてるような。韓国の人が悪いと言っているのではないんですが、どうも構図が国対国になってるなぁ、と。

美京―確かにそういう面はある。だって、小学生から大人、政府まで、社会の殆どがそういう反応を示すというのは、そういう側面 があるのは否めない。

玲夏―そういうのを個人の視線としてはどう見てるの?ナショナリズムだわ、とか思わない?

美京―そう感じる人もいると思う。でも、何がどうなっているのか正確に知った上で行動しようという人たちもいる。実際今はお互い対話の出来ない状況でああだこうだとやり合ってるじゃない?それをやめようという意見も結構多いのね。正確に問題を把握して、対話をしようと提案する人も確かに多い。教科書の採択って終わった?

玲夏―まだよ。八月一五日ごろに出揃うみたい。(*注)

美京―多分ほぼ採択されないだろうと私たちは思ってるのね。でも五年後にはまたこの問題が浮かび上がってきて、その時は採択されるだろうなって。それを心配している雰囲気がある。

玲夏―採択阻止にはユースフォーラムも一役買ったわね。共同署名を持って抗議のアピールをやった結果 、採択取りやめたところもあったしね。

美京―そうなの?抗議してなかったら採択された?

玲夏―そうよ。教育委員会のおっさんたちはやりたい放題できるとタカを括ってたんじゃないの?ところが蓋を開けると市民運動の猛反対。ビックリして取り下げたって感じよ。

美京―もしかしたら私たち、考え違いをしてるかもしれないわね。だって、韓国が怒っていることを殆どの日本市民が知ってると思ってたし、だから今回は採択されないと思ってたんだから。ところが、実際はどうして韓国が怒っているのかも分かってない人が多いんでしょ?

玲夏―そうね。抗議がなければ採択したわよ。栃木県だって、一度は採択すると決めた。市民の抗議で取り下げたけど。

美京―ってことは、その教育委の人たちは教科書の内容が正しいと思って採択しようとしたわけ?原田さんの言うとおり、お互い精算しきれていない過去の問題が多すぎて、こういう事態になってるってことなのね。

徳子―六月初めに韓国の慶福宮に行ったんだけど、一緒に行った四〇歳くらいの女の人は朝鮮総督府についても知らなかった。これが現実なんだなって、ちょっと絶望的な気分になった。

美京―じゃ、同じ日本人である原田さんは朝鮮総督府とかそういうのをどうやって知ったの?

徳子―大学で部落解放研究会というサークルに入ったんだけど、学内に在日のサークルがあったのでそこで一緒に学習会をする中で知ったんです。在日朝鮮人がいることすら知らなかったし。

彩子―私もずっと日本の公教育を受けてきたので、大学入学後に在日のサークルで日本の植民地政策について学ぶまでは朝鮮総督府がなんなのか知らなかった。

徳子―日本って、分かってる人と分かってない人の落差が大きすぎる。

玲夏―在日コリアンがいることすら知らないもんね。

美京―マジで?

玲夏―だって、自己紹介すると必ず言われるよ、「日本語お上手ですね」って。(笑)

美京―うそ、そうなの?在日一杯いるじゃない。社会の中でお互い出会う機会がないってこと?

玲夏―会うわよ。クラスや学年に一人いたとかいうレベルで。でも色々問題があるのよね、出会いという意味では。九〇%が日本名で暮らしてるっていうし、そういう状況ではまず在日に出会っても分からない。それに学校でも在日の存在なんてまず教えない。

美京―でも、なんで?顔つきが似てるからかなぁ…?

徳子―殆どが通名じゃないですか。そういう風に強制する日本社会があるわけだから。

允姫―在日の方も知られるとイジメとかまずいことがあるんでしょ?

彩子―実際には、在日コリアンだと名乗ったらいきなり差別されるという経験は私自身はないし、あまり聞いたこともない。

 でも、私は大学一年までは通名だったんですが、本名に変えた直後にあった大学の合宿での自己紹介の時、初対面 の大勢の日本人を前に「アン・チェジャ」と名乗るのが怖くなって、一瞬すくんでしまった。それまで使っていた通 名だったら、なんの抵抗も無く、名乗ることが出来たはずなのに。

徳子―日本人以外の人が住んでいるという意識がないよね。八六年に、当時の中曽根首相が単一民族発言をした時にアイヌの人が猛反発したんだけど、私自身、そういうことを通 して改めて認識してきた。  小学校の時の担任は戦争に行った経験のある人だったんだけど、笑いを取るために囃子歌を歌うんです。「チョーセン、チョーセン、パカすんな、同じメシ食ってどこちがう」って。このことを思い出す度に、一緒になって笑っていた自分を思いだして、情けないです。「朝鮮人と日本人と何が違うのか。日本人がどれだけ偉いんか!」という抗議の声を、こんな風に揶揄れる感覚って何なんだろうって思います。もし同級生に在日の子がいたら、どんな思いで聞いていただろうと思うと本当に怖い。それだけ意識の中に日本人以外の人が住んでいるというのがない。

後編へと続く(後編はKマガ本誌でご覧下さい。)

注)この座談会は8月2日に行われました。



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