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K-magazine 第10号
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コリアン座談会 第二部
今コリアンとして思うこと〜日本、コリア、中国、そして私〜

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拉致事件と北朝鮮報道

玲夏−昨年九月一七日、日朝首脳会談の中で、日本人を拉致をしていたことと被害者の何人かは亡くなっていたという衝撃的な発表がありましたね。両国のトップが会うのは初めてでしたので、これで色々と道が拓けるのではないかという期待も寄せられていたと思うんですけど、現実には真逆の方にいってしまった。拉致が発覚して以来の日本の状況は、北朝鮮に対する凄まじい憎悪とバッシングの嵐で、それは在日コリアンにも向かってきている。例えば、在日組織のホームページの掲示板はほとんど閉じてしまわざるをえないほど荒らされた。「人さらいの国の奴らなんか死んでしまえ」とか「朝鮮へ帰れ」などと言った書き込みがたくさんある。私たちのホームページにもそういう記述をしてくる人たちがたくさんいます。

 拉致発覚以降、韓国の留学生とお話する機会があったんですが、大体こういうことを言われるんですね。「数人の拉致くらいでなんだ」と。日本人の方が過去物凄く酷い事を朝鮮人にしてるじゃないか、それを棚に上げている、と怒っている韓国の留学生に何人か会ったんです。これに対して皆さんどう感じますか?

 一方、日本と北朝鮮の敵対の構図は在日にも言えることで、在日の北朝鮮に対する様々な感情が存在する中で、「北朝鮮大嫌い」「つぶれてしまえ」と言う人もたくさんいる。バランス感覚が非常に悪い。日本の影響を多分に受けているとも言えるし、イデオロギーに侵されている部分もあるでしょう。あるいは同じ民族だからこそもっと憎んでいるという部分もある。

 中国朝鮮族は、韓国より北朝鮮の方がやはり近いということもありますし、文化的にも非常に似ている部分が多いんじゃないかなと思います。そういう視点から見るとまた違うことを感じているのではないかと想像しています。

ヒョンチョル−韓国では、先ほど玲夏さんが仰った韓国の留学生のような反応をする人がほとんどだと思うんですよ。私もそういう気持ちを持っています。日本だけではなく、世界の色々な歴史を見たらそういうのはしょっちゅうあったことですし、今さら大騒ぎしているのを不思議に思うところもあります。個人的には、やはり世の中、日本でも韓国でも北朝鮮でもバカは多いんだなと感じています。こういうのはどんどん明らかにして、お互いぶつかりあえばいいのではと思います。

玲夏−日本がヒステリックな反応を見せていることに対して、自分たちのやったことを振り返れという気持ちがある、ということですか?

ヒョンチョル−はい。本当に日本はヒステリーだと思ってます。

玲夏−敬黙君はどうですか?

敬黙−まさにその問題意識から、NGOとして民族やアイデンティティなどについて、理念的に議論するものではなく、運動として何を実践できるか考えています。この話は延々と終わらない議論だと思うんですけど、まず考えていきたいことは、歴史問題からジャッジする、つまり日本と朝鮮半島の関係が、日本がもっと悪いことをしたから拉致問題はそれほど重くはないという、数で問題を計り、勝ち負けを決める構造そのものがいけないんじゃないかなと思います。これは加害者と被害者の問題とをずっと考えていけば分かるのですが、人は、あるいは国というのは、加害者でありながら被害者でありえますね。まさに日本と朝鮮半島の問題、今の日朝関係はそういう風になっています。加害者でありながら被害者である時に、それを個人、つまり被害者または他者の側面からもう少し見てあげるべきではないかと思います。

 例えば「新しい歴史教科書をつくる会」の人々は、新聞報道を引き合いに出して「従軍慰安婦はいなかった」と結論付けるんですけども、被害者としてのハルモニたちの声を聞かないところに問題がある。報道がどうであったとか、そのシステムがどうであったからという捉え方としているだけで、本質に迫ろうとしないんですね。それと同じ問題として、今拉致の被害者はいるわけなので、そこも同時に見ていかなくてはいけないというのが、コリアンを含めて今の社会がするべきことなんです。しかしながら残念なことは、むしろここからが重要なんですけれども、その周りで支える人々は、被害者の立場に立つのではなくて、それを利用して別の政治的なボイスを発するという狙いがあるようにも捉えられています。そこをどう見分けていくかということも、また一つの重要な課題でしょう。歴史問題などの部分でジャッジする、「日本は何百万人を強制連行したからマイナス五〇〇点で、拉致はマイナス一〇点で、だから日本の方が悪いじゃないか」という発想ではいけないだろうなというのが一つです。

 もう一つは、外からどう見えるかというのをどうやって日本社会に伝えていくか。確かに日朝関係は変ですし、すごく歪んでいるんですけども、それを中国から見たら、韓国から見たら、あるいは米国から見たらどう見えるのかということが、日本には完全に欠落していると思うんですよ。そういう多様なボイスを見せていくことができれば、少し問題を相対化できるんじゃないかなというのがもう一つの意見です。

玲夏−9.11のテロが米国であった時に、そこでアラブ系の米国市民が非常に緊張した状況に陥ったということは皆さん報道などでご存知の通りです。アラブ系の人たちが街に出て、本当に命がけのようなかたちで、自分たちはテロをした人たちと違うんだということを言うために「テロ反対」のプラカード掲げてデモをしている姿を私は本当に痛々しく見ていたんですね。それが他人事ではなくなったというのが今回の9.17以降の状況だと思うんです。北朝鮮を支持している人たち、朝鮮学校、朝鮮総連の人たちだけがやられているわけではない。

 一例を挙げますと、私たちのメンバーにほぼ決まっていた家庭教師のアルバイトをこの事件発覚を機に断られた現役小学校教師がいます。「今のような時期にあなたのような人を雇うのは不本意だ」と言われたそうです。金さんだったり朴さんだったり崔さんだからという理由で職も失っているというのが現実としてあるわけなんです。これは本当に冗談にならないと言いますか、他人事じゃなくなっている状況があるんですけど、この事件に対して、それ以降繰り広げられている状況をどういう風に思っていますか?

(後略)


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