Kカルチャー 音楽評
「世界がもし100人の村だったら」
「もし、現在の人類統計比率をきちんと盛り込んで、全世界を一〇〇人の村に縮小するとどうなるでしょう。」という書き出しから始まるEメールが去年、世界中で話題になった。日本でもそれをもとにした絵本が百万部以上の売上を記録しているので、ご存知の方も多いだろう。それによると一〇〇人のうち八〇人が標準以下の居住環境に住み、七〇人が文字を読めず、五〇人が栄養失調に苦しみ、一人が瀕死の状態であるという。そこには圧倒的な貧富の差が示されている。そして最後にはこのように世界を見ることで相手をあるがままに受け入れ、自分と違う人を理解する事の大切さが書かれている。今回は日本で話題になったこの絵本ではなく、その中で再話を担当された池田香代子氏の監修による公式イメージアルバム「世界がもし一〇〇人の村だったら」を紹介しよう。
参加アーティストは有名どころでいうとジョーン・バエズ、喜納昌吉&チャンプルーズ、ナナ・ムスクーリ、ジミー・クリフ、フェイ・ウォン。その他にもブラジル、インドネシア、コンゴ、モンゴル、韓国、マリ、ポルトガル、ノルウェー、ニュージーランドなど十八ヶ国十八アーティストによって構成されている。「イマジン」や「花」などお馴染みの有名な曲もあれば、今までまったく聴いた事のないジャンルの音楽など様々だ。名曲も聴けるし、新しい発見もある。とてもお得で面白いアルバムだ。
中でもいくつか強烈に印象に残った曲がある。インドネシアを代表する女性歌手「ワルジーナ」というアーティストだ。このアルバムの中では「クロンチョン」というジャンルの名曲「オレ・シオ」を熱唱している。「クロンチョン」とは16世紀ごろ、船乗りたちによって持ち込まれたポルトガル音楽と混ざり合って生まれた混血音楽で、クロンチョン・ギターと呼ばれる4弦の小型ギターを中心に演奏される。このギターの音色と美しい歌声がとても心地よい。望郷の思いを切々と歌った名曲だ。
韓国出身の「リーチェ」が歌う「オギヨディラ」もよい。もう何十回も聴いている。十八歳でアイドルとしてデビューした彼女は現在ニューヨーク、ロンドン、ソウル、東京などを拠点に活動している。「オギヨディラ」とは韓国の舟歌のフレーズで、船を漕ぐときのかけ声だそうだ。静かでスローなテンポの曲であるのに、歌声からは力強くポジティブな印象を受ける。「動きをとめた風 雨もあがった さあさあ 船を漕げ」。
そしてアジアの歌姫「フェイ・ウォン」。聴いた瞬間、透きとおるような美しい歌声に圧倒された。なぜか澄み切った空のイメージが浮かんで、清々しい気分にさせてくれる。
このアルバムは平和をテーマにしているが、当然単に平和について歌っている曲だけを集めたものではない。神への信仰、望郷の思い、反戦を訴える曲など内容は様々である。これだけいろんな音楽が並んでいると一〇〇人いたら一〇〇人分の様々な表現法があるのだなと感じる。それぞれに生きていることへの実感が豊かに表現されていて、聴いていると気分が高揚したり、胸が熱くなったりと心に響く。名曲ぞろいの楽しいアルバムだ。
(梁武允)
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