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K-magazine 第12号
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『となりの韓国人』  黒田福美著

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 副題は〈傾向と対策〉、帯には「必要なのは文化の通訳!仕事よりメシが大事な韓国人、完璧なんて望まない韓国人、はっきり言わなきゃ分からない韓国人、愛情は表現してナンボの韓国人」とある。

 もし著者が「芸能界きっての韓国通」として知られる、本誌第七号のメッセンジャーにも登場して頂いた俳優の黒田福美氏でなかったら、私はこの時点で大きな先入観を抱いたかも知れない。なぜって、副題と帯だけでは、今までもあまた出版されてきたであろう韓国オリエンテーション本と読みとれなくもないからだ。

 どっこい、そこは韓国と関わって二〇年の筆者、実体験から導き出された独自の考察が、韓国(人)への愛情を孕みつつ、ふんだんにちりばめられていて興味深い。

 仕事の合間にメシを食う日本人が韓国人と仕事をするとき、もう少しで一段落するからといって、メシを後回しになどしてはいけない。温かく栄養のあるものを、正しい時間に食べることが人間の基本だと考える韓国人にとって、食事をさせないことは、即ち人間として扱っていないことになるのだから。

 また、日本では、意見が対立しても言葉を選び、相手のプライドを傷つけないよう穏便に話を進める。しかし、人の考えは食い違っていて当然と考える韓国人は、まずはそれを明らかにしながら調整しようと考える。だから韓国人同士の論争は、ほとんど喧嘩にまでエスカレートすることもあるが、お互いに理解し納得すれば、それ以上わだかまることはない。

 日本人と韓国人は、顔も言語(文法)も似ているためその他の面も似ているのではないかと勘違いをしてしまう。韓国人にものを頼むとき、日本語の直訳で「できるだけ?して下さい」などと頼んではいけない。韓国人に遠慮は無用。なぜなら、韓国語の表現は日本語のそれよりずっと具体的で直接的なのだから。

 なるほど、文化の通訳ね、と腑に落ちる。今まで韓国人と付き合っていて、どうも理解できなかった部分が、エピソードをまじえながらわかりやすく解きほどかれていく。

 本書の秀逸は、「韓国人は日本人が嫌いなのか?」と題された章。ワールドカップ開催にあたって、外国人観光客のために、主な観光地において無償で案内を買って出た通訳ボランティアについて紹介がなされる。その一人、タプコル公園の案内に立った老婦人の記述は、印象に残る。

 この公園は、植民地時代、日本からの独立を叫ぶ「三・一独立運動」の起点となった場所である。この独立運動に参加したがために、日本政府の弾圧により夫を亡くした。民族独立を夢見て立ち上がった夫は、反逆者として日本人に殺されたのだ。その彼女が、ここを訪れる日本人観光客に、この公園の歴史や意味を日本語で解説する。どんな気持ちでこの仕事をしているのか、著者の質問に、もはやすべてを昇華させたような柔和な表情で答える。

 「歴史をお互いに正しく知って、お互いを理解することで、未来に向かってより良い関係をつくれたらいいじゃないですか」。日本を、これまでさんざん恨んだであろう。憎んだであろう。その心情をおもうと、こころがふるえた。

 「芸能界きっての韓国通」。筆者の所属事務所ホームページにはこうある。しかし、こんな魂を揺さぶるエピソードを紹介できる筆者を、このプロフィールで済ませたくない、そんな衝動を覚えた。

 (琴志夏/東京)


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