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K-magazine 第14号
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『コリアンタウン民族誌』 原尻英樹著  ちくま新書

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 本書は著者が1986年から足かけ12年間に及ぶハワイ、ロサンジェルス、東京・荒川、大阪・生野区のコリアンタウンでのフィールドワークの集大成である。

 作者によれば、日本定住コリアンの歴史的解釈に出てくるキータームは「民族」「祖国」「差別」「強制連行」である。コリアンアメリカンとの明らかな違いは、出身母国との一体感であり、政治にどう寄与するのかが大前提であったがゆえ、人権獲得意識が希薄であったと指摘する。またコリアンタウン構想が持ち上げるも、具体化せずに頓挫してしまう原因としては、生活に根付いた結束力とその経験のなさであるという。

 対して、コリアンアメリカンの歴史的解釈に出てくるキータームは「ドリーム」「成功」「安定」「家族」。アメリカンドリームを夢見て、異国の地でがむしゃらに働く一方で、土のつく仕事を忌避しホワイトカラーへの憧憬が強い。またアメリカ社会からも、支配者側(WASP)と被支配者側(この場合貧困層の黒人)とにサンドイッチされ、アメリカにおける権力構造のなかで、「白人」からは搾取され「黒人」からは憎まれるミドルマン的役割を担わされている。

 私がアメリカのコリアンに目を向けた嚆矢は、1992年におきたロス暴動であった。黒人が複数の白人警官から暴行されたのにもかかわらず、警官側が無罪となり黒人たちが暴徒となった。黒人たちは当初ビバリーヒルズに向かったが、警官たちから銃を向けられ丘を引き返し、コリアンタウンに流れこみ破壊と略奪の限りをおこなった。当時の報道からのロサンジェルスのコリアンといえば、酷薄でレイシストで吝嗇家という負のイメージが一般的であろう。アメリカ市民としての常識をわきまえず、ひたすら己の利益のためだけにがむしゃらに働き、黒人をバカする。黒人が暴徒と化し、コリアンのリカーストアを襲撃するのもやむなしといった論調であった。著者は当時を振り返り、ミドルマンを位置づけるアメリカの構造社会に問題があるとする。コリアンの黒人への態度は確かに酷薄ではあるが、それは欧米のレイシズムではなくヤンバン志向であり、事件が双方のコンフリクトの連続でしかとられなかったせいで、白人対黒人の人種主義的意味合いが社会から吹き飛ばされてしまったと指摘する。

 著者は言う。「生身の人間同士のつきあいには、葛藤や対立が当たり前で、それを乗り越えて、コミュニケーションが成立する」と。いま日本社会には在日コリアン以外の他のエスニックも多くいる。もちろんニューカマーもそうであるし、ブラジル人やインド人が多く住む町もある。今後、地域や社会が成熟し、無視や排除ではなく、存在を認めた上での葛藤や対立が腹蔵なくできれば、多様な文化の可能性がでてくると期待したい。そのためには日本社会のマイノリティーの古参である在日コリアンが、その方向性を発信する。日本社会のバイプレーヤーとしてしか見なされてなかった在日コリアンが、豊かな社会の旗手として担うなんて、ちょっと楽しい。そうなれば、将来在日コリアンが密集する場所がなくなったとしても、私は寂しくはない。

Kang HwaLim/TOKYO


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