特集1 〈日本−在日−韓国〉ユースフォーラム 2005
歴史の分かち合いと共有のために
2005年7月28日から8月1日にかけて、今年で第9回を迎える〈日本−在日−韓国〉ユースフォーラム2005が大阪で開催された。
今年2005年は戦後60年、日韓条約締結から40年を迎える節目の年。「日韓友情年」の様々な行事が開催され、「韓流ブーム」の影響もまだまだ強い一方、歴史教科書問題や領土問題、靖国神社参拝など「歴史問題」をめぐる対立と葛藤はますます深まっている。
このような歴史を巡る対立が深刻な今こそ、日韓の若者が直接出会い、共に学び対話することが何よりも重要であるという思いから、「歴史の共有と分かち合いのために」という行事主題を設定した。
韓国からは約60名の若者が来日し、日本・在日と合わせて総勢200名以上の若者が参加する熱気溢れる行事となった。プログラムは、フィールドワークとシンポジウム、交流会といった恒例の構成だったが、今年は特にフィールドワークに力を入れ、一泊二日の時間を十分に取り、中身の濃いものとなった。また最終日には行事主題とリンクした歴史認識問題を考える公開シンポジウムを開催し、「歴史の葛藤を克服し、アジアに友好と平和を定着させよう」というユースフォーラムのアピール文を発表した。
今年もフォーラムを通じて、たくさんの出会いと感動が生まれた。以下、フィールドワークとシンポジウムについて、KEYの参加者からの体験ルポをお届けする。
「東アジアの平和と北朝鮮人道支援」フィールドワークに参加して
ハンクネット代表の竹本昇氏の講演会により、「東アジアの平和と北朝鮮人道支援」フィールドワーク(FW)は幕を開けた。
竹本氏と在日コリアンの友人が、国際社会の中で日本だけが人道支援を中止したことに疑問を抱き、在日と日本人の双方から状況を正していこうという想いで子供たちへの食糧支援を始められたという話などを伺った。関東大震災時の朝鮮人虐殺と今日の日本の対外観には根底に同じものが横たわっているのではないかという話にもはっとさせられた。
次は、グループに分かれて朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の抱える様々な問題に関する街頭アンケート調査を行った。私たちが準備した設問に加えて北朝鮮に対する率直な印象も尋ねてみたが、回答者個人の意見というよりは、世論の大勢に流されたような声が多いという印象を受けた。
感想交換会では参加者同士も打ち解けてきて、FWについて熱く語り合う場面も見られた。急遽通訳を務めるというハプニングもあったが、振り返ると、ここでほんの少しでも通訳をしたことが、参加者間の通訳に徹しようという気持ちにさせてくれたように思う。微力ながらも意思疎通の手助けができたことは、ユースフォーラムの意義を鑑みても嬉しい限りである。
2日目は「東アジアの平和と日韓青年の役割」と題したワークショップを行った。日本側が強調する世界の非核化に対して、韓国側からは「北朝鮮が核を持たざるを得ない今日の対外状況も理解できる」という意見が出たのには驚いたが、全く納得できないわけでもなく、自分の中での東北アジアの平和に対するビジョンがいかに曖昧かを痛感することとなった。日本では、マスコミの影響で北朝鮮の現状を想像すらできない状況が作り出されており、人間が人間らしく行動するという意識が欠けているとも感じた。また、米国の動向が東北アジアに与える多大な影響について順を追って知ることができたのも大きな収穫であった。北朝鮮の核問題は、米国の、ひいては世界の核問題でもある。
貧困と飢餓に苦しむ隣人である北朝鮮の人々。いずれは難民として日本にもやってくるのではないかと私は予想している。彼らを受け入れるのか、再び苦しむことを知りながら強制送還するのか。その選択によって、東北アジアの中での日本の位置付けは大きく変わるはずである。平和を望むならば、彼らがやってきたとき、政治的にではなく人道的に対応する道があってもよいはずだ。
FWを通じて、北朝鮮の人道支援に取り組むと同時に、日本の体質も変えていかなければならないことをより強く感じるようになった。「東北アジアの平和の実現は、北朝鮮、韓国、日本の主体性とよりよい関係性にかかっており、特定の国家に縛られない在日コリアンは東北アジア全体をグローバルに捉えられる存在である」というワークショップでの発案も思い出される。私たちには必ず何かできることがあると信じ、東北アジアの平和と北朝鮮人道支援について今後も引き続きアンテナを張り巡らせていきたい。
日韓中青年シンポジウム「歴史の分かち合いと共有のために」
7月31日には、歴史認識の共有について考える「日韓中青年シンポジウム―歴史の分かち合いと共有のために―」(ユースフォーラム主催)を大阪市立中央青年センターで開催した。このシンポジウムは、戦後・解放60年を迎えた今年もなお、日本の歴史教科書問題や靖国神社参拝などを巡って日韓、日中の摩擦・対立が続く中で、日韓中の青年が歴史の問題にどのように向き合い、解決すべきかを考えるために企画された。
シンポジウムでは最初に基調講演として、比較教育学を専攻し、特にドイツとオーストリアの歴史教育・政治教育を研究している近藤孝弘さん(名古屋大学助教授)からお話を受けた。近藤孝弘さんはドイツがポーランドと行ってきた歴史教科書対話の取り組みを紹介した上で、「国際歴史教科書対話とは偏った歴史理解を他者の目を通して修正する試み」であると語られた。ドイツがポーランドと歴史教科書対話を進めた背景には、戦前の反省に基づいて民主主義を実現しようとするドイツの国民の政治的意志があったことを挙げられた。一方で日本の場合は、歴史認識の歪曲や靖国神社の参拝問題を解決しようとする国民の政治的な意志が不足しており、政治家と国民が馴れ合いの関係にある。靖国神社参拝に賛成する3割の世論を変えていくことが必要であり、また、歴史認識の対立やナショナリズムの強化によって葛藤を抱える日韓中の関係を良い方向に導くために、市民が知的・理性的であることが大切であると語られた。
基調講演の後には、日本、韓国、中国の青年から発題が行われた。
まず韓国の青年の発題として、KYCの金鍾洙さんが韓国での政府次元・民間次元での過去精算の活動を紹介した後、東北アジア平和のための提言として、韓国と日本が開かれた民族主義を通じて東北アジアの協力を強化すべきであるという発表を行った。中国青年の発題では、神戸大学に留学中である安成浩さんが中国と日本の歴史認識の葛藤だけでなく、中国と韓国においても高句麗を巡って歴史認識の摩擦が生じている、それらを克服するためには、事実認識に基づいた歴史認識を共有していくことが必要であると述べた。最後に日本青年の発題としては、様々な市民活動に関わる役重善洋さんが日本における韓国・中国の反日デモの報道には、韓国・中国に対する差別意識があることを指摘するとともに、靖国神社参拝は国家の意志に国民を誘導・動員するために機能していることが語られた。
発題後の全体討論では、韓国人参加者から歴史認識が政治的意志であるという基調講演に賛同の意を示した上で、日本の歴史教科書の歪曲や政治家の靖国神社参拝などを日本の市民が具体的にどのように変えていくべきかという質問が多く出された。
討論の最後にはコーディネーターから、「歴史問題を考えるとき、国家対国家のナショナリスティックな対立に回収されるのではなく、歴史を美化する勢力に対して国家を超えた市民の対抗軸を作ることが大事である。国家を超えた市民の対抗軸を作っていくためにも、偏狭なナショナリズムを個々人のレベルで乗り越えていくことが必要。またフォーラムのような日韓市民の交流と対話の場が、その土台となることを期待する。」という言葉で締めくくられた。
今回のシンポジウムでは、基調報告や発題とも歴史認識を巡る日韓、日中の対立の第一義的な原因は日本の歴史認識の問題であることを指摘するとともに、自国中心史観から脱却して東北アジアを視野に入れた歴史認識を市民の側が作っていく必要があるということが共通して語られ、参加者全体でも共有することができたように思う。日本の歴史認識問題や自国中心の歴史観の形成に対して、国境を越えた市民の連帯を強化し、歴史認識を共有していく努力を積み重ねていくことが大切であると改めて感じさせられた。
(以下、省略)
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