Kカルチャー 音楽評
『RomanTopia』 イ・サンウン
私は2002年夏から約1年、語学学習のため韓国に滞在した。その間ラジオやCD店で様々なK-POPを聞いたが、中でもダントツに気に入った歌手がいる。
彼女の名前は「イ・サンウン」。
1998年、当時18歳の大学生であった彼女は歌手でビューの登竜門であるMBC江辺歌謡祭に出場。「タムダディ」で大賞を受けて、アイドルとしてデビューする。178cmの長身とタンバリンを持ちながら歌うスタイルが大衆に受け、国民的人気を得た。それ以降、各種新人賞を独占し、CMやデビュー曲「タムダディ」と同名の映画にも出演したほか、ラジオのDJ、テレビの司会などで幅広く活動するようになった。
しかし彼女は、アイドル歌手として成功を収めたにもかかわらず、その後作られたイメージの自分に疑問を感じ、韓国を飛び出す。イギリス、アメリカ、そして日本へ拠点を移し、好きな絵の勉強をし
つつ音楽活動に励んだ。日本ではリーチェ(Lee-tzsche)というアーティスト名で音楽活動を行った。今でも少し大きなCD店に行けば、日本で発売した彼女のアルバムが並んでいる。この異国での生活を境に彼女の音楽性は大きく変わった。アイドル的存在からアンダーグランド的なアーティストへ変貌を遂げたのである。
彼女の楽曲は歌声、サウンド、歌詞とどれをとっても独創的である、いや、この3つがうまく調和してこそ生まれる独創性であると言える。
彼女はいわゆる、今流行のラブソングを決して歌わない。歌詞には「星」「太陽」「宇宙」「空」「川」「砂漠」といった自然を形容する言葉が所々にちりばめられている。それら自然との結びつきから人の様々な感情を、彼女独特の無感情的に聞こえつつも何か心の奥底にしまわれている太古の記憶を思い起こさせるような声で、幻想的で不思議な感覚を呼び起こすサウンドにのせて歌う。それは、私たちの心の深い部分を響かせ、共感を呼び起こしてくれる。
彼女がこれまで発表した数々のアルバムのうち、一番のお勧めは「ウェロップコ
ウッキンカゲ」(さびしくておかしい店)という97年に発表されたアルバム。ここに収められている歌には彼女がもつ独創性がいっぱいに詰められている。ちなみにこのアルバムの最後に収められている曲「Ogiyodiora」は日本にて98年10月に公開された映画「がんばっていきまっしょい」の主題歌
になった。
今年の6月末に待望のニューアルバム「RomanTopia」が、前作から2年ぶりに発売された。前作「シンビチェホム」
(神秘体験)にて試みられた電子サウンドの未熟な部分が見事にカバーされ、彼女特有の世界観に加え、電子サウンドを取り入れたことからより都会的なにおいがするアルバムになっている。
「私の歌が個人の心を動かせたらうれしい。結局人が変わらないと社会も変わらないじゃないか。感性を少しでも美しく作ろうとするのは音楽ではないか?」6月18日に開かれた光州人権賞授賞式の舞台に大衆歌手として初めて舞台に立った彼女がそのとき残したコメントである。 |