特集2 〈日本-在日-韓国〉ユースフォーラム2006 報告
−平和の東北アジア未来構想−
「東北アジア時代−青年としての可能性を探る」
今年のユースフォーラムは、10月2日から5日にかけて「平和の東北アジア未来構想」を主題に、韓国ソウルにて開催された。「過去を見つめ、未来を切り開く」ことを目的に、日本−在日−韓国の青年による開かれた「対話・交流・学び」のテーブルを長きに亘り提供し続けてきたユースフォーラム。「お互いを知り合うことから未来がはじまる」をコンセプトに、日韓市民間の交流、認識の共有という層を地道に積み重ねてきた成果をもとに、通算10回目を迎える今回、新たに明確な主題が打ち出された。“未来を担う青年世代が、東北アジアの平和に向けて具体的にどうコミットしていくべきなのか”、日韓市民社会の活動家のアジェンダの共有と実践課題の選定を主眼に、東北アジアに横たわるイシューについてこれまでよりも一層深く議論を重ねることを重視した。
開幕講演「韓国と日本の未来の世代、東北アジアの平和連帯のため一つになる道」、三つのフィールドワーク([1] 韓米/日米同盟と東アジア、[2] 核兵器のない東北アジアのために、[3] 北朝鮮をどのように見るのか)、「アジアから見た改憲動向」という公開講演でそれぞれ学び、座学及びディスカッションを中心とした構成で進められた。今回、具体的な実践課題の抽出までには十分至らなかったものの、朝鮮半島を取り巻く周辺各国の動きや市民社会の役割について認識を深め、議論していく中で、東北アジアの平和へと連なる我々という存在の希望、双方社会で活動していく上でのヒントを得る貴重な機会となった。
フィールドワーク[3] 北朝鮮をどのように見るのか
朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)が核実験を強行した時期に、「北朝鮮」をどう見るか≠ニ題して行われた今回のフィールドワークは、複雑で根の深い問題を抱えている「北朝鮮」を私たちがどう理解し、どのように向き合っていくべきなのかをめぐって、韓国・日本・在日それぞれの立場から考えて議論する、非常に有意義な場となった。
まずは韓国で北朝鮮研究をされている徐輔赫氏が、北朝鮮の国家体制について、政治理念、経済事情、社会状況にいたるまで、歴史的背景を手がかりに講演された。植民地支配と分断という状況の中で生まれた民族主義≠ニ、中ソの葛藤の中で生まれた自主外交≠ニいう選択によって、国際社会における適応能力を培えず、瀬戸際外交で経済難を乗り越えようとするしかないジレンマに陥っている北朝鮮。今回の核実験の意図としては様々な見解があるだろうが、まずはそうした北朝鮮の国家アイデンティティとジレンマに対する理解をもとに、解決の手立てを考えるべきであること、また、北朝鮮が核実験を行った後もなお、「朝鮮半島の非核化実現の意志はいまだ変わりない」と表明している点に希望があるとの言葉が印象的であった。
続いては、南北関係の展望について、韓国での世論調査などをもとに、東国大学北韓学博士課程の金鍾洙氏からの報告があった。韓国国民の間では、北朝鮮の核保有に反対としつつも今回の核実験の背景にはアメリカに責任があるとの見方が共有されていること、また、政府の包容政策については、そのことが核実験を引き起こしたという直接的な証拠が無い中ではやめるべきではないとする意見が一定支持されていることなど、日本の世論との違いにあらためて驚かされる内容であった。
次に、日本で北朝鮮の子どもへの食糧支援を行っているハンクネットの上野さとし氏の発表は、拉致問題以降ますます理解の無い日本社会の中で、それでも支援を続けている理由として、日本人であることの歴史認識をふまえ、「人道主義」を越えた「政治的提言」として日朝関係を語りたいとの思い、日本の右傾化に対する危機感や使命感を熱く語られ、非常に感銘を受ける内容であった。
また、KEYの金朋央氏からは、在日コリアン社会における総連の役割と変遷、日本の対北経済制裁やバッシングに苦しむ朝鮮籍コリアンの現状についての報告があった。また、今回の核実験に対して民団が総連の事務所前で抗議するという在日社会の矛盾が露呈した事件もあり、まずは在日コリアンの立場としてそうした状況を解決していかなくてはならないとする問題意識が語られた。
夜には北朝鮮移住民(いわゆる「脱北者」)との交流と、彼らと関わりを続けているKYC大邱の李真香氏より韓国国内の北朝鮮移住民に対する問題について報告があった。韓国における北朝鮮移住民は一万人近くになるというが、いまだに彼らへの社会の理解は低く、生活上様々な困難が存在している。この日三名の青年が私たちの質問に答える形で個人史を語ってくれたが、辛い体験に関わるような不躾な質問に対しても一生懸命誠実に答えてくれた様子が今も脳裏に焼きついている。
最後の日には、都羅山展望台を訪問したが、すぐ先に北朝鮮が見えるという状況を目の当たりにし、非常に不思議な感覚であった。また「京畿線は、民族の統一の象徴であるが、同時に、ユーラシア大陸の平和をつなぐ存在なのだ」という言葉にハッとさせられた。
「北朝鮮」をどう見るか=Bそれは、どう解釈するのかというより、どう向き合っていくのかという問題であり、一人ひとりに突きつけられている問題なのだ。都羅山駅の向こうの大地を見ながら、そんな風に感じたフィールドワークであった。
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