私たちは今後も日朝間における対話の継続を求めます
2004年5月22日、日本の小泉純一郎首相が朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)を訪問し、金正日総書記と第2回日朝首脳会談を行いました。会談終了後に平壌で開かれた記者会見で、小泉首相は「お互いの現在の不正常な関係を正常化していかなければならない、両国の敵対関係を友好関係に変えていく、対立関係を協力関係にしていく、このことが両国にとって最も利益になるという大局的な話をしたいということで、今回敢えて再訪朝した」と発言しています。私たちはこの首相の発言が、日朝関係そして東アジアの平和をつくる土台となる考え方であることから強く支持を表すとともに、今後も両国がこの考え方を大切にして日朝国交正常化に向けた対話に乗り出すことを強く求めます。
今回の日朝首脳会談では、まず日本人拉致問題に関して、拉致被害者のご家族5人が日本に帰国することになり、同日小泉首相とともに来日しました。また、曽我ひとみさんのご家族は早期に第三国で再会する方向で調整すること、安否不明の拉致被害者については北朝鮮側が直ちに真相究明のための調査を再開することで合意されました。私たちは1年7ヶ月にわたって家族が離散する状況が解消されることになったことを心から歓迎します。そして今後、残された家族の離散状況の克服、安否不明者の調査をはじめとした日本人拉致問題の解決に向けた国家責任の誠実な履行に向けて、今後も継続して日朝間で対話がなされることを求めます。
安全保障に関わる問題においては、両国が日朝平壌宣言の遵守を確認し、金正日総書記は北朝鮮のミサイル発射実験の凍結延長を再確認しました。また北朝鮮の核開発問題についても、六者協議を通じた平和的解決への努力を行うという点で共通の立場を示しました。そして小泉首相は、日朝平壌宣言を遵守する限りは経済制裁措置の発動はしないと表明し、食糧25万トンと1千万ドル相当の医薬品などの人道支援を約束しました。私たちはこの会談結果が、日朝間の敵対関係を緩和し、相互の信頼と協力を醸成し、東アジアの平和的関係につながるものとして評価するとともに、今後着実に履行されることを求めます。
また日本側は在日朝鮮人に対する差別が行われないよう友好的に対応することを約束しました。一昨年9月17日第1回日朝首脳会談以降、北朝鮮に対する敵意と蔑視が激化している日本社会の中で呻吟してきた在日コリアンとして、切実な思いでこの約束が守られることを訴えます。そして今後行われる日朝国交正常化交渉においては、在日コリアンの権利に関して両国政府が十分に協議をし、また当事者である在日コリアンの声がきちんと反映されることを私たちは求めます。
一方で、私たちは今回の首脳会談において、日本の朝鮮植民地支配の清算に関する議論が皆無だったことを大変憂慮します。日朝平壌宣言には、植民地支配に対する責任を「経済協力方式」で終了させることが盛り込まれてしまいました。しかしながら、このような国家間の一方的なやり取りで半世紀以上も踏み躙られた被害当事者の人権が無にされてしまえば、またもや両国間に回復できない傷を残すことになり、到底容認することはできません。今後の日朝交渉において同問題が必ず議論され、植民地支配の謝罪と戦争被害者個人に対する国家補償の実現がなされることを強く求めます。
今回の日朝首脳会談の結果に対して、日本では様々な評価や見解が述べられています。私たちはそれら意見の中に、今回の結果を「外交ゲームの勝ち負け」としてだけ語られることが多いことに強い危惧を覚えます。戦後半世紀以上も不正常な関係が続いた両国の間に残る懸案を解決するには残念ながら一朝一夕では困難であると考えられます。両国間の信頼醸成からはじめ、諸懸案の解決に向けたたゆまない対話の努力が両政府間でなされることが必要であり、またそれを下支えする両国の市民間の相互理解と交流が今後より一層促進されなければなりません。
私たちは今回の日朝首脳会談で示された両国間の対話による諸懸案の平和的解決をめざす姿勢を評価するとともに、日朝両政府がこのような姿勢で誠実かつ速やかに日朝国交正常化を行うことを強く求めます。
2004年5月28日 在日コリアン青年連合
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