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日本人拉致問題に対する朝鮮民主主義人民共和国の誠意ある対応を求めると共に、朝鮮民主主義人民共和国に対する経済制裁に反対する在日コリアン声明
去る2004年12月24日、日本政府は、朝鮮民主主義人民共和国(以下:北朝鮮)政府が、拉致被害者の横田めぐみさんの「遺骨」として提供した骨が別人のものと判明したことを正式に発表した。これに対して、北朝鮮外務省スポークスマンは、「日本が発表した遺骨『鑑定結果』なるものが、特定の目的のために事前に綿密に企てられた政治的脚本に基づくものであるとの疑惑を抱かざるを得ない。」との声明を発表し、日本政府の主張に全面的に反論した。「遺骨」問題をめぐり双方の意見が激しく対立しているが、少なくとも、拉致問題解決に向けた北朝鮮側のこの間の対応が不誠実であると私たちは考える。拉致問題の被害者である家族が、拉致問題加害国である北朝鮮側の対応を不誠実であると感じ、被害国である日本側の鑑定結果が「別人」となった以上、これに対する説明責任は加害国の北朝鮮側が負うべきである。しかしながら、これまでこの説明責任を北朝鮮側が十分に果たしているとは言えない。北朝鮮側は再三、「拉致問題は既に解決された」と強調しているが、真相究明・補償が尽くされているとは言えず、現在のような状況では到底解決されたとは言えない。私たちは、拉致問題解決に向けたこの間の北朝鮮政府の対応に強い憂慮を表明する。その上で、今からでも拉致問題解決に向けた北朝鮮政府の誠意ある対応を求める。
一方、「遺骨」の鑑定結果が別人と分かるや否や、北朝鮮に対する「経済制裁」論がより一層高まっている。衆参両院の拉致問題特別委員会は拉致問題解決のために経済制裁の積極的発動の検討を求める決議を採択している。日本政府としては現段階では、即時に経済制裁を加える意向を表明していないものの、北朝鮮側の回答によっては経済制裁の発動もありうる情勢だ。私たちは北朝鮮に対する経済制裁の発動に反対する。経済制裁は問題をさらに複雑にするだけであり、いかなる問題の解決にもつながらない。
第一に、経済制裁の発動は、日朝国交正常化の実現を大幅に遅らせることになる。この間、私たちは、日朝両国の過去の国家暴力に対する謝罪と補償を基にする日朝国交正常化の実現を強く求めてきた。日朝国交正常化は、日朝両国が日本と朝鮮半島の間の100年にわたる不正常な関係に終止符を打ち、二度と植民地支配や拉致問題を起こさないような国家間関係を作るために避けて通ることはできない道であり、一刻も早く実現されなければならない課題である。また、日朝国交正常化は日本が過去の植民地支配を反省し、戦争被害者に対する補償を実現する重要な機会でもあり、在日コリアンに対する法的地位や権利をしっかりと保障するための契機でもある。日本と朝鮮半島の境界で生きる在日コリアンとして、日本と北朝鮮の対立的な関係が21世紀も永遠と続き、過去清算や戦後補償、在日コリアンの権利保障といった課題が引き続き未解決のままにされるということは、在日コリアンの立場から考えると、想像しただけもおぞましい。
第二に、経済制裁の発動は、東北アジアの緊張を高めるものとなる。経済制裁とは、戦争行為の「一歩手前」というべきものである。現に北朝鮮政府は、経済制裁の発動を「宣戦布告と見なす」と警告している。もし、経済制裁が発動されれば、日本が同席する六者会談に北朝鮮が参加することは考えづらく、六者会談の枠組みそのものを危うくさせ、核問題の平和的解決にも重大な悪影響を与えるだろう。
第三に、経済制裁は、北朝鮮の子どもや病弱者などの罪もない社会的弱者にその矛先を向けるであろう。このことはイラクに対する経済制裁などを見ても明らかである。北朝鮮に対する経済制裁は極めて非人道的な効果をもたらすといわざるをえない。それでも、金正日政権に対して少しでも「ダメージ」を与えられるならば行うべきだという、「政権崩壊」を促進するための触媒として経済制裁の発動を主張する人々もいる。しかしながら、政権を選択するのは北朝鮮の人々であるにも関わらず、北朝鮮の人々の声に耳を傾けることなく日本が北朝鮮の「政権崩壊」を語ることは、大いに問題がある。
第四に、経済制裁は、在日コリアンにも影響を与える。現在ですら北朝鮮に住む親族と在日コリアンとの人的物的な往来は容易ではないが、経済制裁の発動はその往来の可能性を大きく奪うことになる。もし、親族との人的物的な往来を制限されたならば、その時の在日コリアンの悲しみは筆舌に尽くしがたい。
第五に、そもそも経済制裁という手段が、拉致問題そのものの解決につながるかどうかは大いに疑問である。経済制裁を加えることで、これまで行われてきた拉致問題解決のための対話の窓口がすべて閉ざされてしまう可能性が高い。拉致問題の責任は北朝鮮政府が追うべきであり、徹底した真相究明と謝罪・補償を行う責任が北朝鮮側にはある。しかしながら、北朝鮮政府との窓口を閉ざすことは、拉致問題の解決につながるよりも、同問題の解決がさらに困難になる危険性が高まるのではないかと私たちは危惧している。
私たちは、国家としての日本の面子を守るため、北朝鮮への経済制裁の発動が必要であるという日本社会の世論が高まりつつあることに、偏狭なナショナリズムの恐怖を感じている。また、持つ者が持たざる者を苦しめるという経済制裁の論理に、つまり弱肉強食の論理に疑問を感じることなく賛同する日本社会の風潮にも、同じく偏狭なナショナリズムの臭いを感じている。国家の尊厳を重んじる思考と行動様式、弱者へ圧力を加えても痛いとも思わない思考と行動様式はまさに偏狭なナショナリズムのそれであり、日本が「いつか来た道」に再び戻ろうとしているのではないかという危惧を抱かせる。
そして、経済制裁の発動は、日本の外国人に対する「差別」や「拝外主義」を助長する危険性がある。また、北朝鮮によるテロを防止するという名目の下、様々な監視が強化され、経済制裁反対を叫ぶものに「非国民」のレッテルを張り、「発言することに相当な恐怖感を覚える」社会風潮が作り出されることも否定できない。「そのようなことは日本社会ではありえない」と一笑に付されるかもしれないが、朝鮮学校に通う子どもたちに対する暴言・暴行事件などこれまで日本の偏狭なナショナリズムの被害を受けてきた私たち在日コリアンとしては敏感にならざるをえないのである。
以上の理由から私たちは北朝鮮に対する経済制裁の発動に反対する。そして、北朝鮮政府に対しても、日本人拉致問題の解決に向けた誠意ある対応を求めるものである。
2005年2月2日 在日コリアン青年連合(KEY)
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