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2006年3月、日本政府は、出入国管理及び難民認定法(入管法)改定案を国会に提出した。この改定案は、日本政府が2004年12月にまとめた「テロの未然防止に関する行動計画」を踏まえ策定されたもので、日本に入国する16歳以上の外国人のうち、特別永住者や外交公用などの来日者を除く、全ての外国人に指紋や顔写真などの生体情報の提供を入国時に義務付けるものである。また、退去強制事由として、きわめて曖昧な構成要件の「公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする行為を行う恐れ」を加えることで、「強制送還」の恣意的な運用を可能としている。
この法案は、2000年に全廃された外国人登録法(外登法)上の指紋押なつ義務を、「テロの未然防止のため」として、入管法上の義務という形で復活させようとするものである。日本人や特別永住者には求めない上陸時の指紋と顔画像などの電子情報を、他のすべての外国人に求めるという入管法改定案は、外国人を「テロリスト」「犯罪者」とする人種主義・人種差別・外国人嫌悪を扇動するものに他ならない。その上、特別永住権を保持していない在日コリアンや特別永住者と同じ歴史的経緯をもつ「永住者」の在留資格の在日中国人などには入国時の指紋情報の提供を義務づけるなど、歴史的経緯での整合性も全くない法案である。
それだけではなく、特別永住者や日本人の希望者に対して、あらかじめ入管局で指紋登録をすませておくと、鉄道の自動改札機のような機械式ゲートに指紋情報をかざすことで、スピーディに出入国審査が終わるという自動化ゲートの新設も盛り込まれている。便利さを前面に打ちたて、自発的に国家が個人の生体情報を収集しようとしているのである。
同時期に国会の内外で大問題になった共謀罪の新設の意図と入管法改定を重ね合わせると、様々なレベルで市民を監視・管理する国家体制を構築しようとする日本政府の意図が見えてくる。にもかかわらず、日本社会では、入管法改定の問題が「外国人の問題」として捉えられていたせいか、あまり注目されなかった。特別永住権を持つ在日コリアンが対象外とされていることに安住してはいられない。このような思いから、KEYでは入管法改定に反対する緊急行動を行った。
行動に際しては、KEYと、すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク(RINK)、(特活)コリアNGOセンター、日朝日韓連帯大阪連絡会議(ヨンデネット大阪)の四団体が「入管法改定に反対する共同行動実行委員会」(以下、共同行動実行委員会)を構成し、一連の行動を行った。
2006年3月28日、共同行動実行委員会は、大阪府庁記者クラブにて緊急記者会見を行った。共同行動実行委員会から、「人種主義・人種差別・外国人嫌悪を扇動する外国人指紋制度を復活させる「出入国管理及び難民認定法改定案」の廃案を求める声明」を発表し、行動提起として、(一)国会請願署名を展開すること、(二)4月14日に緊急抗議集会を開催することを発表した。KEYからは金尚司総務部長が指紋押なつ経験当事者の立場から、指紋押なつの非人道性について訴えた。
緊急抗議集会は、「入管法改定案の廃案を求める緊急集会〜外国人指紋制度の復活に断固反対する〜」と銘打ち、4月14日にエル大阪で開催された。大阪平和人権センターと反差別国際運動日本委員会(IMDAR−JC)が協賛し開催されたこの集会では、開会辞の後、「改定入管法の問題とその危険性」と題した丹羽雅夫弁護士(RINK代表)の講演が行われた。その後、特別アピールとして、松岡徹参議院議員(民主党)が、自身の所属する参議院法務委員会で入管法の問題を提起し、廃案に追い込むつもりだとアピールした。団体アピールでは、協賛団体の大阪平和人権センターから富永事務局長、反差別国際運動日本委員会から森原事務局長のあいさつがあり、当事者の声として、甲南女子大学のリリアン・テルミ・ハタノ助教授、KEYの金尚司総務部長がアピールを行った。最後に、KEYの康利行総務次長が声明文を朗読し、百人を超える参加者の拍手で声明文を確認した。
入管法改定案の廃案を求める国会請願署名は、5月10日時点で、衆議院議長宛に1万2307筆、参議院議長宛に1万3178筆の署名を集めることができた。集まった署名は、5月15日に松岡徹民主党参議院議員を紹介議員として参議院議長宛に提出した。しかし、衆議院議長宛分は、その時点で既に入管法改定案が衆議院を通過していたために受け付けることができないとのことであった。参議院で法案が否決され、衆議院で再議論される際には提出可能になるので、参議院での否決を期待しながら、衆議院議長宛の請願署名を松岡徹事務所で預かってもらうことにした。
しかしながら願いは届かず、参議院法務委員会で5月16日採択されるという情報が伝わるや、再度入管法の廃案を求める主張を広範化するために、共同行動実行委員会(この時点から、大阪外登法問題交流会も参加)は街頭情宣活動を5月15日に大阪梅田で行った。
その他にも、4月5日に行われた東京での院内集会にKEYから金尚司総務部長が参加、5月12日に東京で開催された緊急集会にもKEY東京の李貴絵教育部長が参加するなど、入管法廃案に向けた様々な連帯活動を行った。
力及ばず入管法改定案は5月17日の参議院本会議で可決・成立してしまい、早ければ2007年の秋以降に法律が施行されることとなる。また、現在自治体が管理している外国人登録情報のうち特別永住者以外の外国人の登録情報を入管局が一元管理することを目指す外登法、入管法の改定案が来年にも提出される可能性がある。外国人に対する管理がより一層強化される危険性が高まっている。KEYは、人種主義・人種差別・外国人嫌悪が扇動されないように、外国人指紋制度運用及び外登法と入管法の現状に今後も厳しい目を向けていく。
宋勝哉/事務局
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