日朝首脳会談から5年、あらためて日朝国交正常化を求める
2002年9月17日に第1回日朝首脳会談が開催されて、今日で丸5年目を迎える。当初この会談によって、日本と朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)との間の長きに亘る不正常な関係に終止符が打たれ、両国に横たわる諸課題の解決に向けた一筋の光明が差すかのように見えた。この動きを国交正常化への第一歩を踏み出したと、私たちは大きな期待感とともに受け止めたはずだった。しかしながら、公式的に拉致問題が認定されたことは、日本社会の激しい怒りを買い、皮肉なことに日朝関係は更なる悪化の一途を辿ることとなった。私たちは、20世紀に行われた植民地支配及び国家暴力の清算と、東アジアの平和体制の構築という大局的見地から、今こそ日朝の持続的な対話と国交の樹立が必要であると考える。
昨年の北朝鮮によるミサイル発射実験、そして核実験の強行を受け、朝鮮半島と周辺国との間には摩擦と緊張状態がより一層高まった。しかしながら、その後の六者会談の場における朝鮮半島の非核化に向けた持続的な対話を通じて、緊張状態が大きく緩和することへの期待が生まれてきている。特に六者会談の下に設置された米朝作業部会が9月1、2日に開かれ、北朝鮮保有の核施設の「年内無能力化」という合意がなされ、公式表明はないものの、米国が北朝鮮をテロ支援国家指定から解除する動きも報じられた。さらに9月7日ブッシュ米大統領が休戦協定を平和協定に転換する可能性を示唆するなど、米朝関係の大幅な進展が現実味を帯びてきている。また、北朝鮮の水害問題などにより延期になったものの、第2回南北首脳会談の開催が決定するなど、南北関係も着実に進展している。南北関係に比べ、紆余曲折を繰り返してきた多国間の対話の枠組みがようやく機能し始め、北朝鮮核問題の解決や、朝鮮半島を巡る冷戦的対立構造の解消に向けた動きが活発化している。私たちはこれらの動きを肯定的に受け止めており、一層の対話の進展を望むものである。
一方で、日朝関係については、依然として緊張関係が継続している。今月6日の日朝作業部会では、過去清算問題、水害への人道支援について、担当大使が「相互の不信を取り除き、前進させる重要な機会」と述べるなど、改善の兆しが見え始めたが、結果としては人道支援を見送り、経済制裁措置を延長する方針を固め、大きな進展は無く終了した。このように日朝関係については、北朝鮮との関係改善を進めようとする他の周辺国との温度差や遅れが際立ってきている。日朝交渉の行方は決して二国間に限定されるものではなく、東アジアの平和体制構築のプロセスに確実に連動するものである。両国政府の対話努力を私たちは求め続ける。
日本社会においては、メディアに頻繁に露出する北朝鮮へのイメージは「異常さ」のみが強調され、敵対心をあおる状態が続いている。拉致問題の解決に向けた取り組みが一向に進まない状況への苛立ちはもっともであるが、その苛立ちを国家間の関係断絶や敵対状態の肯定に結びつけて、反北朝鮮世論が強化されていることは、由々しき事態である。拉致問題については被害者への謝罪と補償、安否調査や情報公開などを通じた真相究明が北朝鮮政府によって誠実に行われることが必要であることは言うまでもない。ただし拉致事件の解決と日朝交渉は二律背反の関係ではなく、共に進むべき関係にあることを私たちは訴えたい。同時に、曖昧にされてはならないのが日本の植民地支配に対する責任問題である。歴史認識を基礎とした誠実な過去清算を行っていくことが、朝鮮半島と日本の未来に向けた関係作りの出発点になる。国交を正常化する努力は、両国間の長い歴史の中で培われた不正常な関係を解きほぐし、拉致事件や植民地支配という国家暴力を二度と起こさないための積極的な模索であるはずだ。
過去を乗り越え、日朝間の新たな関係を築く上で非常に重要な役割を担う主体として、地域に暮らす市民やNGOの存在がある。政府間にとどまらない多様なチャンネルを通じた具体的な市民同士の人的交流・連携は、両国市民の顔の見える関係を作り出し、平和共存に向けた雰囲気を生み出していく。そのような意味でも、限られたチャンネルの中においても日朝間の市民交流を活発に行っていく必要がある。その一つとして、今北朝鮮に必要な人道支援を日本の市民・NGOが積極的に行うことを強く望む。北朝鮮は今年8月中旬にあった断続的な豪雨により甚大な被害を受け、国連の各機関も緊急支援の必要性を訴えている。未来の共生社会のパートナーである北朝鮮の市民が水害被害に苦しむ様子を直視し、人道支援を積極的に進めることの必要性を訴えたい。
現在、北朝鮮に対する敵意と蔑視が蔓延する日本社会にあって、在日コリアンに対してもその矛先は向けられつつある。日本政府によってとられる北朝鮮への制裁措置は、有形無形に在日コリアンにも影響を与えている。再入国許可の一部制限や、在日本朝鮮人総連合会及び関連施設への相次ぐ強制捜査などに象徴される行為は、日本政府の政治的意図抜きに考えることはできない。さらに直接的ではなくとも、このような状況に多くの在日コリアンが不安や絶望にさらされている。国家の狭間で生きる私たち在日コリアンは、不正常な国家間関係の中で常に翻弄され、最もその影響を受ける存在である。日朝交渉においては、在日コリアンに関わる課題についても十分な協議が行われること、当事者である私たち在日コリアンの要望が確実に反映されることを求める。
日朝間の不正常な関係は、日本社会の中であたかも当たり前かのように受け止められている。この固定化された状況を動かすには大きな困難さを伴うだろう。しかしながら、諸課題の解決に向けたたゆまぬ対話の努力で国交正常化への道が開かれる。そのことは、取りも直さず、東アジア地域全体の平和と共生につながるものだ。今後における両国政府間の誠実な対話の重要性を再度確認しながら、私たちは第1回日朝首脳会談から5年目を迎える今日、改めて日朝間の対話の促進と国交正常化を求めるものである。
2007年9月17日 在日コリアン青年連合
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