日朝首脳会談から9年を迎えて 民主党新政権にあらためて日朝国交正常化交渉再開を訴える
2002年9月17日、小泉首相(当時)が朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)を電撃訪問した歴史的な日朝首脳会談から、丸9年を迎えようとしている。私たち在日コリアンが期待を寄せた日朝国交正常化に向けた動きは、拉致問題の発覚によって日本社会に蔓延した対北朝鮮バッシングと対話の途絶によりつかの間の夢のように消え、両国間の冷え切った関係は一向に改善されることなく今日に至っている。
自民党政権下、2008年8月の日朝実務者協議において、北朝鮮政府は拉致問題の再調査、日本政府は対北制裁の緩和を合意し、対話による両国間関係改善の兆しをみせた。しかしながら、その後においては日本側の首相交代の混乱によって合意は実行されず、交渉は中断されたままであった。2009年、「東アジア共同体」構想を謳う民主党政権が誕生し、外交政策の転換を期待するも、普天間米軍基地移転への対応に如実に表れたように日米同盟重視の政策は踏襲され、政権交代後も日朝の政府間交渉は全く進展していない。昨年の「韓国併合100年」を迎えての菅首相談話においても北朝鮮に対する言及はなく、在朝戦争被害者への謝罪や補償の契機は失われたままである。
北朝鮮国内においては、継続する食糧難に加えて水害による被害が深刻化し、朝鮮中央通信によれば、1万5千人以上が家を失うという大きな被害が出ていると報告されている。この深刻な事態において、米国政府は8月20日、NGOを通じて最大90万ドルの人道支援を決めた。さらに、韓国政府も50億ウォン規模の南北協力基金の執行を議決した。日本政府は2006年以降、北朝鮮政府への経済制裁を継続(今年4月に1年間の延長を閣議決定)しており、何ら援助を行っていない。未来のパートナーである北朝鮮の市民が被害に苦しむ様子を直視し、人道的見地から支援を積極的に進めることの必要性を訴えたい。
北朝鮮政府に対しては、かねてから私たちは拉致問題の真相究明、核開発の中止を強く求めてきたが、その重要性は今も変わらない。また延坪島事件においても、民間人を巻き込んだ砲撃は、何を持ってしても許されるものではない。李明博大統領は、南北対話の再開にあたって、哨戒艦沈没事件、延坪島事件の謝罪と真相究明、非核化への合意を前提条件とする姿勢を崩さなかったが、米中の戦略対話の進展とともに、対北強硬路線一辺倒からの変化も見え始めている。南北双方の政府はいたずらに軍事的緊張を高めるべきではなく、双方が誠実に向き合う努力を講じるべきである。私たちはこうした変化に期待をしながら、一刻も早く対話が促進されることを望む。
現在、六者会談再開に向けての動きが活発化している。7月22日には2年7カ月ぶりに南北の六者会談首席代表が会合、29日には米朝会談が実現、8月には中国・ロシアとの協議が行われ、北朝鮮の六者会談復帰の可能性が強まっている。こうした状況下、日本の北朝鮮との交渉を含む東アジア外交の明確なビジョンは残念ながら見えてこない。
さらに、北朝鮮に対する敵意と蔑視が蔓延する日本社会にあって、在日コリアンに対してもその矛先が向けられてきた。昨年11月には、延坪島沖で起きた砲撃事件を理由に、朝鮮学校に対する高校無償化適用手続きを停止させるという差別的な政策が取られた。この問題については菅首相(当時)が内閣総辞職の前日8月29日に無償化適用審査の再開を指示した。あまりにも遅い決断であると言わざるを得ないが、適用に反対する勢力の動きも活発になっている中予断を許さない状況でもあり、一刻も早く就学支援金の支給を実現しなければならない。
今年3月11日に起きた東日本大震災は、巨大津波と原発事故を伴い、東北地方をはじめとする多くの人々の生活を破壊し、甚大な被害を生み出した。被災地の復興が何よりも優先されるべき状況の中で、国内政治は与党内不一致と与野党間の政争のために遅々として進まず、6月に菅首相の辞任の意向が発表されて以降は外交面においても空白状態が続いてきた。現在「震災復興」の名の下でナショナリズムが高まる中、90年代後半より若者を中心に先鋭化した排外主義がいっそう加速することを私たちは憂慮している。被災したのは「日本国民」だけではなく、震災からの復興は、在日外国人との共生、そして諸外国との関係構築とともになされるべきものである。日本国内にあっては、"国難"を一国中心主義で乗り越えようとするのではなく、外にも内にも開かれた国として日本を再生させるべきである。
このような状況の中で9月2日に発足した野田新政権に対し、私たちは改めて、日朝国交正常化交渉の再開を強く求めるものである。野田首相については、「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」とするかつての発言から、すでにアジア各国から歴史認識において不信感が示されている。私たちは日本政府に対し、かねてからアジアとの関係構築に真摯に取り組むべきであると要求してきた。歴史認識を基礎とした誠実な過去清算を行っていくことは、朝鮮半島やアジア各国との信頼関係醸成に向けた重要な出発点になるはずである。そして今、北朝鮮に対して日本がとりうる姿勢は、圧力一辺倒の政策を転換し、対話強化に向けた真摯な努力を行うことではないだろうか。北朝鮮との対話を途絶する大きな要因である拉致問題についても、決して日朝交渉と背反するものではなく、並行して進めてこそ紐解ける関係にあるということを訴えたい。日朝間の不正常な関係が、ようやく機能し始めた多国間対話の障害になってはならない。
9年目の9月17日を迎え、新政権においては、停滞した日朝関係を打開し、関係構築に向けてのビジョンとプロセスを示すこと、東北アジアの非核化と平和のために、日朝国交正常化交渉を再開することをあらためて強く要望する。
2011年9月17日
在日コリアン青年連合(KEY)
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