朝鮮民主主義人民共和国政府による再度の核実験に抗議し、 朝鮮半島の平和の実現に向けた関係各国の対話を求める
2009年5月25日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)政府は2006年に続いて2度目となる地下核実験を実行した。同日に朝鮮中央通信を通して発表された「国と民族の自主権と社会主義を守り、朝鮮半島と周辺地域の平和と安全保障に貢献することになる」という今回の核実験に関する主張を、私たちは到底容認することはできない。朝鮮半島の非核化は、北朝鮮政府自身、過去様々な機会で表明している。1992年発効の南北非核化共同宣言では「南と北は核兵器の実験、製造、生産、受け入れ、保有、貯蔵、配備、使用をしない」と合意している。また、2003年北朝鮮政府の核拡散防止条約(NPT)からの脱退宣言では「NPTから脱退するが、核兵器を製造する意思はなく、現段階での核活動は唯一、電力生産をはじめ平和目的に限られる」と表明し、2005年9月に開催された第四回六者協議では「北朝鮮はすべての核兵器及び既存の核計画を放棄し、NPTおよび国際原子力機関(IAEA)保障措置に早期復帰することを約束した」という共同声明が発表されている。今回の核実験は前回に引き続きこれらの合意に矛盾するものである。
私たちKEYは2006年に行われた最初の核実験の際にも抗議の意を表明した。原子爆弾によってかけがえのない人生を奪われた、朝鮮人も含めた多くの被爆者たちの声を、私たちは決して忘れることはできない。その訴えも空しく再び行われた今回の核実験に私たちはあらためて強く抗議する。そして、これまでの非核化に関する合意に立ち戻り、核兵器開発を即刻中止し放棄することを北朝鮮政府に強く要求する。
今回の核実験は、いかなる理由もそれを正当化するものにはならない。しかし一方で、米国を含む国連安保理常任理事国5カ国が核保有国であり、世界的な核軍縮がこの間一向に進んでいない状況の中で北朝鮮の核実験のみを非難することは説得力を持たない。北朝鮮は核兵器を持つ大国と、その「核の傘」の下にある同盟国に挟まれ、常に軍事的な緊張の中で体制を維持してきた。このような国際環境の中で、北朝鮮政府は自国への圧力に対して強硬な姿勢をもって応え続け、核兵器開発にまで至った。これを解決するためには、国際社会全体が核軍縮、核廃絶に向けて進んでいくしかない。今年4月オバマ米大統領はプラハで、「核のない、平和で安全な世界を米国が追求していくことを明確に宣言する」と演説し、包括的核実験禁止条約(CTBT)批准への意向などを表明した。米国政府はこの核廃絶宣言を言葉だけに終わらせることなく、率先して自国が核軍縮を迅速に進めることを私たちは強く求める。同時に、他の核保有国も核軍縮を遅滞なく進めるべきであることは当然である。
核実験直後に開かれた国連安保理の緊急会合では、今回の核実験が北朝鮮に核計画の放棄などを求めた過去の安保理決議の「明確な違反」に当たるとして非難し、新たな決議の採択を目指すことで一致したという。同時に新たな制裁を課すべきだとの声も上げられている。しかし、制裁という方法は、現在の国家間の緊張状態を緩和・解消するための根本的な手段とはならない。また、軍事力を伴う制裁決議は再び朝鮮半島に戦争をもたらす道を開くものであり、決して採ってはならない選択である。困難な状況ではあるが、現在の問題を解決するためには対話と交渉に拠るほかない。
そのために私たちは、六者協議を構成する各国が協議再開に向けて努力することを求める。また、朝鮮半島の安全保障問題に関して非常に重要な役割を果たしてきた朝米交渉は、オバマ政権誕生以降、ほとんど進展を見せていない。ブッシュ政権末期には積極的な朝米対話が行われ、同時に第五回、第六回六者協議では、先の共同宣言履行のための合意が相次いで発表された。これを受けて北朝鮮政府は寧辺の核施設無能力化作業を進め、米国は北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除することで、朝鮮半島を取り巻く状況は好転する展望をみせた。今一度、そのような対話基調に戻るように朝米両国は努力しなければならず、関係各国も対話ムードを促進する役割を果たすべきである。
韓国政府は今回の核実験を受けて、翌日に大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への全面参加を公式に宣言した。北朝鮮政府は以前より韓国のPSI全面参加を「宣戦布告とみなす」と主張しており、昨年より急激に強まった南北の対立が深まることは必至と言われている。このような状況だからこそ、韓国政府は緊張状態を高める行動に対しては慎重になるべきで、南北関係の改善を通じた東アジアの平和実現に向かうための外交努力を積み重ねるべきである。
さらに私たちが強く憂慮することは、史上最悪な状態にある日朝関係がさらなる悪化の道を突き進んでいくことである。日朝間の政治対話は全く行われておらず、両国からは軍事的挑発を伴う強硬姿勢が示されるのみである。核実験を受けて麻生首相は26日、北朝鮮のミサイル発射基地への先制攻撃を想定した敵基地攻撃能力について「法理上は攻撃できる」とまで発言した。このような姿勢は、相手側のさらなる強硬姿勢を呼び、軍事的対立をエスカレートさせる非常に危険なものであることは明白である。私たちは今こそ、国交正常化も含めた日朝間の対話に努力する冷静さを両国に求める。
私たち在日コリアンは、東アジア情勢に大きく影響を受ける存在である。とくに日本と朝鮮半島の国家間の緊張が高まる度に、日常生活において不安と恐怖を感じてきた。前回の核実験の時には、朝鮮学校の生徒に対する暴力事件が多発し、日本の独自制裁措置の継続により北朝鮮訪問をはじめとした朝鮮籍者の出入国が厳しく制限されるなどした。今回の核実験によって、このようないわれの無い人権侵害が起こらないように、日本政府及び社会の冷静な対応を私たちは強く求める。
あらためて私たちは、北朝鮮による今回の核実験に断固抗議する。それとともに、核問題を含む軍事的緊張を生み出している根本原因である朝鮮半島の冷戦的対立状況が一刻も早く解消し、私たちが平和で安らかに生活できるような国際環境を作り出すための関係各国の積極的な対話を強く要求する。
2009年5月28日 在日コリアン青年連合(KEY) 共同代表 康利行、金朋央
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