社会活動・イベント

過去の克服と東北アジアの平和をめざして 日朝国交正常化を求める一万人署名

2004年9月17日 署名提出行動の報告

 約四ヶ月間継続してきた署名活動により、9月17日現在で合計10,804名分の署名を集めることができた。日朝首脳会談から二年を迎える2004年9月17日、私たち在日コリアン青年連合(KEY)の代表は、この10,804名分の署名を提出するために東京霞ヶ関にある外務省を訪れた。

 この日の署名提出・要望行動は、民主党の松岡徹参議院議員の仲介により実現し、在日コリアン青年連合から宋勝哉共同代表、金朋央共同代表、金尚司総務部長が出席した。外務省からは、朝鮮半島を担当するアジア大洋州局北東アジア課、太田学課長補佐と山崎修外務事務官が出席した。また、この場を仲介していただいた松岡徹参議院議員の秘書、大西聡さんも同席した。

 まず初めに、宋勝哉共同代表が、小泉内閣総理大臣、川口外務大臣宛ての「過去の克服と東北アジアの平和を目指して 日朝国交正常化を求める要望書」を朗読し、署名活動で掲げてきた四つの署名要求項目の実現を要求し、10,804名分の署名を伝達した。

 交渉に先立ち、宋勝哉共同代表が、「在日コリアンにとって非常に大切な日朝国交正常化だが、その日朝国交正常化に在日コリアン自身の声を反映する機会がないので、署名を集め、政府に直接伝達することにした」と今回の署名伝達・要望行動の趣旨を説明した。これに対して、太田課長補佐も「日朝平壌宣言から二年を迎える今日、日朝国交正常化を求める一万人以上の方々の署名の思いを重く受け止める」とし、「政府としても皆さんの声を聞きながら日朝国交正常化交渉に臨んで行きたい」との基本的な立場表明を行いました。

 その後の意見交換では、主に@日朝国交正常化交渉に在日コリアンの声を反映させる法案について、A署名要求項目の一番目の課題である「植民地支配謝罪・戦争被害者への個人補償の実現」に関する諸問題、B署名要求項目の四番目の課題である「在日コリアンの法的地位と権利の保障」に関する諸問題について論議が行われた。

 まず、@の日朝国交正常化交渉に在日コリアンの声を反映させる「制度的な」方法を日本政府が考えるべきではないかというKEYの提案に対して、太田課長補佐は「メールやファックスなどでご意見を送っていただければ拝見している」という答えに留まった。それに対して、金朋央KEY共同代表は「在日コリアンが能動的に意見を発信するだけでなく、日本政府が在日コリアンから直接意見を聞くような制度をつくることも大切である。他の重要事案についてはタウンミーティングなどの方法でそのような努力も行われているので、日朝国交正常化交渉を進める上でも、在日コリアンの声を聞く制度的な努力が必要ではないか」と詰め寄った。太田課長補佐は「具体的に制度をつくるとはいえない。ご意見を参考にする」と応えるに留まった。

 Aの「植民地支配謝罪・戦争被害者への個人補償の実現」については、宋勝哉共同代表が、日朝平壌宣言の朝鮮語正文では「사죄(謝罪)」と表現されている言葉が、日本語正文では「お詫び」という意図的な翻訳がなされていることについて問いただした。これについて、太田課長補佐は「日本語・朝鮮語双方が正文であり、双方の言葉を尊重している」としながら、国会答弁を引用しつつ、「『謝罪』という言葉が、『補償・賠償』につながる」という憂慮が日本社会にあることを指摘し、「謝罪」という表現をあえて使っていない背景について説明した。KEYからは、日朝平壌宣言による過去の植民地支配への日本政府の反省を基本的には評価しながらも、「『謝罪』という言葉が、『補償・賠償』につながる」ために、「お詫び」という言葉を使っているとするならば、日朝国交正常化時に結ばれる日朝条約においては、日本語としても必ず「謝罪」という言葉が使われなければならないことを強調した。その上で、1995年の村山首相(当時)談話を下にした、過去の植民地支配への謝罪が、日朝条約に必ず明記されなければならないと強く要求。これについて、太田課長補佐は「現在、日朝交渉がそこまで議論する段階にいたっていない」と答えるに留まった。また、KEYからは過去の植民地支配の清算問題が、「経済協力方式」のみによって解決されてはならず、戦争被害者に対する個人補償の実現が急務であることを強い口調で要求した。外務省側は「日本政府の立場は、日朝平壌宣言の履行」だと述べ、「経済協力方式」により過去の植民地支配の清算問題を解決し、個人補償に応ずる考えがないことを繰り返し、議論は平行線に終わった。

 Bの在日コリアンの法的地位と権利の保障」については、宋勝哉共同代表が、在日コリアンの法的地位及び権利は、その植民地支配に対する責任として保障されることが必要であるという立場表明を行った。日韓条約時には曖昧にされたこの歴史認識を、日朝条約締結時に日本政府が明確にする考えがあるのかという宋勝哉共同代表の問いに対しては、「現在、日朝交渉がそこまで議論する段階にいたっていない」と答えるに留まった。また、在日コリアンの権利問題について、具体的にどのような問題が現在も残されている課題である日本政府は認識しているかとの現状認識を問う問いに対しても、太田課長補佐は、同じく「現在、日朝交渉がそこまで議論する段階にいたっていない」と答えるに留まった。

 最後に、「拉致問題なくして日朝国交正常化なし」という言葉で語られる「拉致問題」の解決は「法律上規定されている拉致被害者を指し、いわゆる特定失踪者は含まれない」と明確にしつつ、日本国民の感情論として、拉致問題に対する、朝鮮民主主義人民共和国政府の明確な誠意ある回答がない限り、現実論として国交正常化を実現するのは難しいのではないかという太田課長補佐個人の見解が述べられた。

 外務省側の反応は、これまで公式的な場で表明している日本政府の公式見解を超えるものはなく、KEYからなされたいくつかの具体的な新しい提案(▼在日コリアンの声を聞く場を日本政府が作ること▼村山談話の「お詫び」を「謝罪」に変え、その趣旨を日朝条約に明記すること▼在日コリアンの権利問題を、日本政府が過去の植民地支配に対する補償として明確に位置づけ解決すること)などについて、日本政府・外務省は明確な回答を避けた。また、戦争被害者への個人補償の実現に対しては否定的な見解を繰り返しており、KEYがこの間署名運動で掲げてきた四点の要求項目に添った形での日朝国交正常化を実現していくためには、乗り越えなければならない障害が大きいことも再認識させられた。

 一方で、要望行動に臨む外務省側の姿勢は真摯であった。この日の意見交換は、具体的な日朝国交正常化のあり方についての双方の立場の違いは大きかったが、日朝国交正常化を実現しなければならないという総論の認識では双方同じくした。その意味で、日朝国交正常化の実現に向けて努力しようとする外務省(或いは北東アジア課)の意欲は感じることができた。

 日朝平壌宣言から二年を迎えるこの日、外務省に日朝国交正常化を求める側から行われた要望行動は、KEYが行ったものだけだった。そのせいもあってか、この日の署名提出行動は、朝日新聞の9月17日の夕刊全国版に掲載され、共同通信によりニュースが全国に配信された。

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